Drafts

@cm3 の草稿置場 / 少々Wikiっぽく使っているので中身は適宜追記修正されます。

ニュースゲーム?

「俺より強い科学者に会いに行く」古今の科学者たちが戦う格闘ゲーム : ギズモード・ジャパン という記事に「ニュースゲーム」という概念が紹介されていた。

Wikipedia にも記事が立っていて例が挙がっているが、前述の記事にも出てくる哲学者たちが戦うフィロソファイターなんかは、単にニーチェの必殺技が「神は死んだ」と「超人」にまつわるものだとか、全然シリアス感もニュース感もない。真面目ネタをゲームにしたってだけ。

Newsgame: O Jogo da Máfiaは同じ会社のゲームだけど、単に密輸で利ザヤ抜いたりするだけだし、他のゲームも今ではできなくなってしまっているのとか、Hong Kong protests inspire smartphone gameみたいにまあ、単にネタにしただけだろ的なのとかがほとんど。つまり、最近の事例でいえばベッキーとゲス極川谷の不倫騒動がゲーム化したのと同様のものが「ニュースゲーム」と呼ばれているようだ。

やった中で結構まともだったのは、Darfur Is Dyingというスーダンの難民問題を扱ったやつで、軍に見つからないように水を汲みに行ったり、その時に大人の男選ぶと「それはあんま一般的じゃないよ、殺されんぜ」って忠告されたり。女の子で捕まったらレイプの危険性があるとか解説が入る。食料、医療、軍隊によって壊される家、いろんなことを気にかけながら進めなきゃいけない。

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それで、ゲーム内に、実際に社会運動につなげるためのボタンがあったりする。

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まあ、これは時事問題を扱ったゲームとしてかなり意味があるほうだと思う。ゲームとしての完成度は微妙で、あんまり面白いとは思えなかった。

他によかったのは1000 Days of Syriaというゲームもなかなか頑張って作られていて、先日取り上げた Depression Quest - Draftsと似たようなHTMLサウンドノベルの形式を取っている。読むのが面倒なのでプレイしていないが、賞も取っているようで確かに選択肢なども作りこまれている印象を受けた。

Bacteria Saladって食中毒を扱ったゲームは、食品が菌に冒されていると思ったら即、店頭から除かなければならないみたいな店経営リテラシーは身につくのかもしれない。それがこのゲームで最も大事なストラテジーになっている。…でもやっぱり面白いというレベルではない。

ここには挙げられていないが、感染症に関するゲームなんかも近いのかもしれない。でも、そこまで時事性を排除しちゃうとシリアスゲームとほぼ同義になるので、時事性はやっぱり必要なのか。

時事性がないけれど Wikipedia 記事内に紹介されているBudget Heroなんかは、よくある「議員減らせば予算が」とかそういう人のリテラシーを上げるために使えるのかもしれない。でも、その意義をちゃんと出すには、現実に近くないといけなくて、何かの誤った知見を錯覚させるためにゲームが作られたりしたら最悪だ。ゲーム性やメッセージ性を持たせるためにデフォルメすることはよくあると思うので、そこのバランシングは難しいところだと思う。

ずいぶん毛色が違うものにニュース閲覧を「ゲーム」化するScoopleというクイズやアンケート形式のがあったようだが、使えないのでどんなのだったかもうわからない。


で、ここまで見てきたように全体的に微妙なのだが、そもそも「ニュースゲーム」と言葉で定義するとどうなるかというと、Wikipedia に引用されているものでは、

“コンピュータゲームとジャーナリズムの接点で製作される幅広い作品全体を指す言葉”と定義

もあるようだが、

"公の論議に参加する意図を持つメディアを利用したゲーム"

という定義で捉えた方がまだ価値がある概念化だと思う。つまり、ニュースに対してより深い理解や参与をするためのチャンネルとしてのニュースゲームというあり方だ。ニュースに関連する事実や分析のアーカイブをどう構築するかのメモ - Draftsで、ニュースの深い理解のためにどうニュースに関連するデータのアーカイブを作るかみたいなことを少し考えていたのも関連すると思う。Naver まとめみたいに、ニュースに関連するものをわかりやすくまとめるというのも関係するかも。つまり、ニュースをまとめなおす作業を ゲーミフィケーションしちゃうとかね。


追記 2016/09/27:

#jset32 hashtag on Twitter がおもしろかった。

一度覗きに行きたいなこの研究会。