Annotated Bibliography とは
あるトピックを理解するのに重要な本や論文を、要約や評価の注釈と共にリスティングしたものである。サーベイなどに使われる。
一般的な内容は
- 要約
- 目的、議論、手法、実験結果など。
- 一般的評価
- 理論的基盤、信頼性、他の論文への影響など
- トピックの文脈における評価
- トピックとの関連性や有用性
で、英語で100語から300語。簡潔になるように工夫するべし。要約2:評価1くらいの割合で要約が重要。
また、一般的ではないが、トピックの説明や、関連キーワード(データベースを検索するときのクエリ)もメモしておくと良いと思う。
リストの順番は著者の名前順、発刊日順といった順番が一般的。また、サブトピックカテゴリー毎にまとめても良い。
例:
- library.sccsc.edu/SubjectGuides/english/AnnotatedBib-SampleEng101-2015-4-22.pdf 下のSCC Library Webpageに挙げられている例。
- A Sample Annotated Bibliography - Creating an Annotated Bibliography - LibGuides at University of North Florida
- Annotated bibliography in vehicle routing - Springer や An Annotated Bibliography of Personnel Scheduling and Rostering - Springerや Ranked set sampling: an annotated bibliography - Springerは少なくとも無料で見れる1ページ目は一般的なスタイルに沿ってないように見える。あとで中身もチェック。
- Annotated Bibliography FAQ's 末尾に例へのリンクが。
参考:
- Trent University :: How to Write an Annotated Bibliography このサイトは Book review の書き方やノートの取り方まで提供している。
- Writing An Annotated Bibliography | Library 一つずつまずちゃんと書かないと後では覚えていないよとか、Annotationのスタイルを統一させよとか、時系列順に書き方が書いてある。
- Annotated bibliography form and function | SIUC English 102.073 Class Blog 一般的に、Annotation 部分は段落下げするとか、ダブルスペースだとか、結構デザインにもうるさい世界であるw
- Using an Annotated Bibliography to Teach Basic Research Skills授業の課題としても使われているんだな
- freshman2 - Annotated Bibliography Annotationの内容として、要約、批評、目的の文脈での関連性や有用性を挙げている。あと100語以上、とも。
- Annotated Bibliography 150語を超えないようにと。4文程度の要約と、2文程度の評価。
- Library:How to Write an Annotated Bibliography - UBC Wiki人文系の場合のやり方だな。目的、内容、議論、理論的基盤、著者の信頼性を書けとか具体的に書いてある。
- Dr. Williams : USC Upstate : English Program / Annotated-Bib-English-Studies まず選ぶときに重要性を判断しろと。新しくて多く参照されている物を。他のページには無かったのは、それぞれのAnnotationでできれば他の文献への reference をつけろという点。これは、後述のマトリックスにつながると思う。ここでも、200語を超えないこと、またサンプルで要約2:批評1の割合が示されている。
- Annotated Bibliography 一般的な Annotated Bibliography とは違うが、自分の研究のための仮説とかを最後の段落で書けと言っている。目的が論文作成のサーベイだからかな。またここでも選定の重要さは語られている。
- INFO 6800 (Winter 2013) Core Functions Annotated Bibliography Assignm… これは少し長めで 200語から300語と。日本語だと400-600文字ちょいだな。
- Year 9 Science Skills 2012 - Annotated Bibliography Annotated Bibliographyの目的と内容について分かり易くまとめている。上の図はこのサイトから。
- hhs-ruggeri - Writing the annotated bibliographyこのサイトも内容と評価の2つを書けと言っている。
- SCC Library Webpage これも分かり易く概要を説明している。内容と評価と関連性の3項に分けている。
オススメ作成法
Mendeley で文献管理して、Notesにコメント書いて、あとでそれを整理する。Notes には書きたいことを網羅的に書く必要がある一方、Annotated Bibliography は簡潔に書かなければならない。BibTeX を元に書く方法→Annotated Bibliography を BibTeX で書く - Drafts
Mendeley で完全自動化できないのか
そういう提案は上がっているようだがまだ実装されていないようだ。ちなみに、Export PDF annotations from Mendeley to CSV or TXTにあるように SQLITE データベースから直接取り出すこともできる。ただし、Notes が FileNotes テーブルではなく、DocumentNotes テーブルに保存されるようになっていたため、このスクリプトは僕が使った時点では動かなかった。また Documents にも note フィールドがあって、重複していたりしていなかったり要調査。文献情報のフォーマッティングとかも含めコーディングするのは大変そうで、完全自動化できなくても、指定フォルダの Notes だけ何かの区切り記号で列挙できるだけで、上の作成は断然楽になりそうではあるが、Notes は Annotated Bibliography の下書きのような役割を果たすので完全自動化とはいかないと思う。
注意:
参考:
- Mendeley Tip: Notes and Annotations | Jenn's Studious Life Mendeley には Notes と Annotations があるが、後者はポストイットみたいに論文に貼り付ける情報を指している。所謂メモは Notes に。
Annotated Bibliography のコーパス
Kan et.al "Using the Annotated Bibliography as a Resource for Indicative Summarization"という論文でコーパスを作っている。要約に使うことを目論見た研究だが、どの論文で使われているかは未確認。著者のサイトにあるポスターではリクエストがあればコーパス渡すよ!って書いてある。コーパス作成はなかなか論文になりにくいと言われるけど、ちゃんと LREC に載っている。いいね。僕が共著したコーパス作成論文も LREC だったな。
Reading List との関係
Reading List は Annotation の無い Bibliography に近い。目的としては、授業や研究室において読むべき教科書、論文などのリストを挙げるのに使われる。
- Mandatory reading 必須
- Recommended reading できればこれのうちいくつかを読む
- Further reading 周辺を含めてもっと知りたい人向け
のように段階を分けるのも良い。
参考:
- Guidelines for the presentation of reading lists 上の3つの区分が書いてある
- D. Ekstrand et al.: Automatically Building Research Reading Lists 僕が初めに Reading List を知った論文。高須先生が紹介されていた。あとで再読。
- Automatically generating reading lists 164p にも及ぶ tech reports。あとで絶対読む。
Bibliography との関係
論文や本の末尾の参考文献章はメインコンテンツとのかかわりを指示された文献のリストである。Annotationは本文中に意味的には明示的に、形式的には非明示的に在る。Annotated Bibliography を元に論文や本を書いて、Annotationを省いたリスト(+α)がそのコンテンツの Bibliography になるというのは一つの理想的な流れである。
Survey Paper との関係
Survey Paper とは Bibliography と Annotation の主従が逆転しているが、基本的にあるトピックについて、文献の集合を紹介することでトピックを概観するという目的と手法は共通である。Survey Paper は重要な概念の説明も網羅するし、文献同士の関連性をよりはっきりと記述するので、そちらの方が読みやすい。Annotated Bibliography を元に Survey Paper を書いて、Annotationを省いたリスト(+α)がそのコンテンツの Bibliography になるというのは一つの理想的な流れである。
Book Review との関係
Book Review (=書評)というのは本が主眼にあるので、トピックのサーベイを行う Annotated Bibliography とは異なる。読者の書籍選びの参考になるように新刊本について行われることが多いなど目的も異なる。 Annotated Bibliography の各エントリは書評より比較的短く、書評より自分の意見を述べる割合が少ないという違いはあるが、概要および意見を含む注釈をつけるという意味では共通点がある。
Glossary との関係
Glossary(=用語集)というのはあるトピックについての用語とその説明のリストである。トピックについて文献とその説明をリスト化する Annotated Bibliography とはトピックの調査において相互補完的になると思われる。
例:
コンテントマトリックス、レビューマトリックス
より構造化したい場合は
- 複数の文献を一望化し横断的読みを実装するコンテンツ・マトリクスという方法 読書猿Classic: between / beyond readers
- 必読文献が浮かび上がる→引用マトリクスで複数の文献の関係と分布を一望化する 読書猿Classic: between / beyond readers
- 集めた文献をどう整理すべきか?→知のフロント(前線)を浮かび上がらせるレビュー・マトリクスという方法 読書猿Classic: between / beyond readers
が参考になる。本来は、Annotated Bibliography の Annotation もレビューマトリックスの自然言語文化したものであるべき。まずはコンテンツマトリクスの代わりになるように Annotated Bibliography を作っていくのかな。引用マトリクスはそれ自体も参考になるが、上に Bibliography との関係でも書いたように引用文脈が Annotation になっているという発想で、Annotationを書いてみるというのは有効だと思う。ただし、引用元の観点とあなたの観点には違いがあるはずなので最終的には違う内容になるだろう。
レビューマトリックスの例(上のサイトより)