Drafts

@cm3 の草稿置場 / 少々Wikiっぽく使っているので中身は適宜追記修正されます。

学際研究が生き残る2つの条件

  • 学問的課題がはっきりしている
  • 共有できる研究資源(データなどを想定している)が十分にある

ここ数カ月、人文科学と情報学の連携について僕が語ったり、人が語るのを聞きに行ったり、ディスカッションしたり、本を読んだりして意外と条件がシンプルな気がしてきた。まず、学際研究が生み出される背景は、それ自体が目的化されている状況などいろいろあるだろうが、どんな背景で生み出されようが上の条件が満たされていれば成功する。バイオインフォや自然言語処理など。実質的な成功はその成果の社会的評価によって定まると思っているが、研究者の規模の微分値とかなり相関が高いので、だいたい「伸びてきている分野=成功している分野」だ。

「課題がはっきり」というのは人工知能を例にとると、ただ人間の知能的処理をコンピュータが再現できれば良いのか、それが知能の本質的な処理である必要があるのかは研究者によって揺れるが、そこの議論を踏まえずとも、人間の知能的処理を定型化して、コンピュータによる実現の実験を行って実現の程度を高めるという課題は共有されている。

学際分野においては、その分野の振り返りや俯瞰がその分野を分野たらしめるということも毎回講演するたびに強調している(あんまり反応が無くて寂しいが、みんなも当然と思っているのか?)が、共有課題周りのそういう議論はたびたび為されて、課題が構造化されると分野が成長していくし、そこで下手に相対主義に陥ると、分野は潰える。

ちなみに、これは学際じゃなくても新興分野一般に言えること、学問一般に言えることな気がする。つまり、0から立ち上げる学問というのがあまり無い以上、学際研究の話として語られるだけなのかも。

学際研究の場に行ってインタビューしてもっと精緻にモデル化してほしいので科学社会学者誰か。

宮野公樹『研究を深める5つの問い』より

課題解決は大学が苦手なので、それを目的にプロジェクト組んでもなかなか成功せず論文ばっかり生産される(p.40)と書かれているがそれはあまり実感とは合わない。良くも悪くも、上の2つを満たしておらず学際研究に四苦八苦している我々は現地の課題解決などを優先して論文を生産していない…!のでメディアには取り上げられたりはする。そして、逆に学問的課題共有とその解決がなされていれば、何か論文にはなるはずだ。つまり、1つ目の条件をちゃんと満たすことが大事。

p.42 の「生まれても育たないし、なくならない」はまさにその通りで、村同士のコミュニケーションが断たれていると育たない。だから、学会の枠を超えて学術知識が流通・蓄積される必要があると思って活動している。