Drafts

@cm3 の草稿置場 / 少々Wikiっぽく使っているので中身は適宜追記修正されます。

search A for B

Reporters could now search stories for key words or events.

という文を訳そうとして、困った。search for XXを探す になるというのは受験英語で習った通り。search の目的語は探りを入れる対象であって目的ではない。search A for B は 捜査対象 - 成果物 なはずだ。

とすると、「ストーリーを探ってキーワードやイベントを探せるようになった。」という意味に訳さなければならないが、文脈的に意味が逆なのだ。何が起こっているのだろうか。


まず、補題として

search documents for key words

を考える。さっきの"search stories for key words"だと、僕が訳そうとしている文書しか出てこないので、一般化した形だ。こちらは、341件ヒットする("search documents for key words" - Google 検索)。上位の方を確認するとどれもキーワードによる文書検索の話をしている。つまり、キーワードを手掛かりに文書を探している。

また、逆のフレーズ

search key words for documents

はヒット件数が0。

A と B の関係は、捜査対象 - 成果物 ではなく、包含 - 非包含 なのではないか。で、A と B のどちらを成果物にするかは文脈次第と。が、本当にそれでいいのかちょっと不安。


そこで、 FrameNet ではどう記述されているんだろうかと思って見てみた→ search.v in Scrutiny。なるほど、文脈 - 着眼点 なのか!スッキリ!! これで元の文も、「キーワードやイベントを手掛かりにストーリーを探せるようになった。」と訳せる。


だがしかし、話しているうちに、for の後を中心とした読み方は元々の search の用法からして不自然なことに気付いた。語源的にも 彷徨い探る感じがあるので、むしろ 包含 - 非包含 という途中の解が補助線として正しく、捜査対象 - 成果物 ではなくどちらが成果かは問わない 捜査対象 - 捜査物 であるだけで、文脈 - 着眼点 のようにまるで for の後を中心としたフレームで捉えるのは不自然だ。ちなみに、FrameNet が間違っているわけではなく、それを解釈した私の間違いです。

錯視のように、わかったような気になったり不自然な気になったりする面白い例だなということで、けんさんと話せて面白かったです。


結果的に訳としては、「ストーリーの中のイベントやキーワードを探せるようになった。」という日本語が成果物を匂わせるので、「イベントやキーワードを手掛かりにストーリーを探索できるようになった。」としておきます。

参考:

Our team built a simple internal database using SQL. Reporters could now search stories for key words or events. Suddenly the dataset became accessible and generating stories became easier.

from Data in the News - Wikileaks - The Data Journalism Handbook この部分

追記 2016/02/01:

初めの訳の部分「イベントを探せるようになった」について元々「イベントを得られるようになった」と書いていたが、探せることは得られることを保証していないので誤訳になる。