Drafts

@cm3 の草稿置場 / 少々Wikiっぽく使っているので中身は適宜追記修正されます。

Anonymous Individuals

OWL 2ウェブ・オントロジー言語クィック・リファレンス・ガイド に「匿名の個体」という訳語は出てるけど、OWL 2 Web Ontology Language Structural Specification and Functional-Style Syntax (Second Edition) 自体の訳ってないよね? 5.6.2 だけ訳しておくよ。


If an individual is not expected to be used outside a particular ontology, one can use an anonymous individual, which is identified by a local node ID rather than a global IRI. Anonymous individuals are analogous to blank nodes in RDF [RDF Concepts].

もし、個体が特定のオントロジーの外で活用されることを望まない場合、「匿名の個体(anonymous individual)」を使うことができる。これは、グローバルな IRI の代わりに、特定のオントロジー内でのローカルな ID によって特定される個体だ。匿名の個体は RDF の世界においてブランクノードと同一視できる [RDF Concepts]

AnonymousIndividual := nodeID
例:
例えば、匿名の個体は、ある個人にとっての住所のように今主題となっているもの(この場合は個人)のアイデンティティには直接関わらないものの記述に使うことができる。
ObjectPropertyAssertion( a:livesAt a:Peter _:a1 )   Peter はある住所 _:a1 に住んでいるがこれは参照解決できない匿名のものである。
ObjectPropertyAssertion( a:city _:a1 a:Quahog )     この未知のアドレスは Quahog 市の中にあり、
ObjectPropertyAssertion( a:state _:a1 a:RI )            さらに Rhode Island 州に属する。

同じ node ID の匿名の個体が別々のオントロジーの中で出現した場合には特別な扱いが必要となる。特に重要なことは、これらの2つの個体は構造的には等価である(同じ node ID を持っているのだから)ということと、その一方でそれらは OWL 2 意味論の中では同一視してはならない(なぜならば、匿名の個体は使われているオントロジー内のローカルな値であるため)ということである。後者については、オントロジー O の公理閉包を構成する時に匿名の個体を定義しなおすことで保障できる。もし、同じ node ID をもつ匿名の個体が、 O の閉包の中に2つの異なるオントロジーが使われている場合、O の公理閉包の中のどちらか一方のオントロジー由来の匿名の個体は必ず O の中でユニークになるような)新しい匿名の個体(で置き換えられなければならない。

例:

オントロジー O1 と オントロジー O2 がともに _:a5 という匿名の個体を持っていて、O1 が O2 をインポートしているとする。2つのオントロジーは同じ node ID の匿名の個体を有しているが、O1 の _:a5 と O2 の _:a5 は別物である。

構造的には、それら2つは等価である。これはたとえば、構造的な等価性に基づいて公理の取り消しの意味を規定するようなツールにとっては重要なことである。

意味レベルでの異なる扱いを保証するには、O1 の公理閉包を計算するときに定義しなおすことが必要である。O1 の _:a5 か O2 の _:a5 のどちらかが全く新しい匿名の個体に置き換えられる必要があるということである。

補足

  • 公理閉包(axiom closure)

Definition 5.4.2 (Imports Closure)

The transitive imports closure of an ontology O consists of O and any ontology that O imports.

Definition 5.4.3 (Axiom Closure)

The axiom closure O of some ontology O is defined as the smallest set that contains all axioms from each ontology O' in the imports closure of O.

from Chapter 5 Ontology Engineering

  • 公理の取り消し (axiom retraction)

こちらは分かっていない、誰か教えてください。retraction 自体は「引き出し」とも訳され逆写像を構成する関数を示すようだ(参考: Section (category theory) - Wikipedia, the free encyclopedia)し、OWLlink Extension: Retractionとか見ててもその理解は間違いではないようだ。OWL の処理系を自前で実装するときとかの話なのかな。node ID が一致するときの構造の等価性自体が何か役に立つと思えないんだけれど...

  • 構造的等価性(structurally equivalent)

OWL 2 Web Ontology Language Structural Specification and Functional-Style Syntax (Second Edition) の 2.1 Structural Specification に構造的に等価(structurally equivalent)というのは術語で、どういう意味を持っているかとちゃんと規定されているが、例を見た方が早い。

The class expression
ObjectUnionOf( a:Person a:Animal )

is structurally equivalent to the class expression
ObjectUnionOf( a:Animal a:Person )

because the order of the elements in an unordered association is not important. In contrast, the class expression
ObjectUnionOf( a:Person ObjectComplementOf( a:Person ) )

is not structurally equivalent to owl:Thing even though the two expressions are semantically equivalent.

まあ、「構造的に等価」そのまんまなんだけどね。やはりこれを踏まえても node ID の同一性が構造的な等価性につながるのは、意味的な等価性と同一視しないことを強調するための前座にしか見えない。