GRAPHICATION2, No.1, 2015
以前から絶賛してて、レポートで引用してみたり、友人にはたまに記事紹介とかもしていた FUJI XEROX の広報誌 GRAPHICATION が冊子体をやめて電子版の配布になった。推奨は iOS か Android のタブレット端末で専用アプリを介して見る方法であるが、僕は飽きっぽく、そういう端末をすべて手放してしまったので、ご利用方法の末尾にあるウェブブラウザからの閲覧に頼っている。アプリ版の、上下は記事内移動、左右は記事間移動というインタフェースはとても良いので、ブラウザ版にも実装してほしい。欲を言えば、電子化に伴って横長A5を基本にしたレイアウトにして欲しかった(そうするとPCでの閲覧性が上がる)が、まあそれは好みの問題だろう、おそらくなるべく紙と同じ体験をしたい人たちが読者層には多そうだ。
今回の特集は電子化1号にふさわしい「本のゆくえ」。
ではコラムごとにメモを。
赤木昭夫 『出版文化の未来』
雑誌絶賛してたんちゃうんか!?って言われそうなほど初っ端から辛口メモやけど、まあメモやから許して。
- p.5 表紙
- ページめくり直後に写真がゆっくりズームアップするテレビ的演出はシンプルながら良いね。
- p.6 木か森か -二〇二〇年の新聞
- まあ電子辞書の時にも言われた一覧性が損なわれる問題。新聞にも目次を付けるとか、電子辞書がやったみたいに項目間リンクを付けるとか、新聞のウェブ記事がやったように関連記事へのリンクを付けるとか、対策は山ほどある
- p.7 雑誌
- (面倒なのでタイトルは正確ではない、雑誌の未来について)新聞の項もそうだが、論考はともかく、ちゃんとデータを引っ張ってきているのは良い。だが、漢数字で「一・六兆円」みたいな数字を並べられてもパッとしないので、典拠付きでグラフ書いてほしかったなぁ。雑誌の代替を携帯としているが、メディアのレイヤーがごっちゃになってる。ブログとか、[カレントアウェアネス・ポータル]みたいなポータルサイトとか、(http://current.ndl.go.jp/)Fashionsnap.comみたいにテーマ特化したキュレーションメディアだと思う。
- p.8 電子小説
- ページをめくる効果について。…わからなくはないけど、ちょっとここまでくると保守性と電子書籍への無知が鼻についてきた。きっと、同じことを電子書籍界隈の人たちも言ったせいか、ページをめくるエフェクトやページ単位での区切れ目はウェブ上で読める電子書籍の多くが備えている。一方で、批判対象はスクロールによる遷移で、うん、目がちかちかするから僕も好きじゃないんだけど、Mac Pro - Appleのようなパララックス的演出とかreveal.js - The HTML Presentation Frameworkみたいにプレゼンの要素をウェブに取り入れるとか、だらだらとしたスクロールにこだわらないコンテンツ遷移はいくらでも設計できる。上で、A5横長デザインにしてほしかったって言ってるのもこの方向性を期待してのことだった。
- p.9 人文書
- 再販可能な資産と企画力によってブック・クラブ的な売り方がという話。人文系の研究書って半分は論文的な学術情報流通の役割を果たしているので、学界の春的な文脈から言えば、もっとオープンにすればと思わなくもない。でも、単に論文ではない「企画力」に着目するのは大事だと思う。人文書について、既存のマーケットに向けつつ、読者を広く新規開拓する、を相反せずに実現するには酒井泰斗×ヒロ・ヒライ対談『本と読者、研究者をつなげるプロデュース術』(2015.12.19)@下北沢 B&B - Togetterまとめの中の人とかに知見を頂くと宜しいのでは。
中略(そのうち読んで追記する)
p.58 BUSINESS CROSSOVER
- ここは縦スクロールが組み合わさっている。特にそうすることのメリットもデメリットも感じなかったが(あえて言うと、PCから上下キーでスクロールしなかったので、マウスを使わなければならなかったのがデメリット)、ほぼPDFのような体感。
- p.59 荻野弘之「やわらかい合理性」
- アリストテレスの実践的推論の話がコアな気がするが、出典が分からず使えない。ニコマコス倫理学にそういう話があったようななかったような。要は、100%合理的に見通せなくても、目的を満たすのなら決断するみたいな柔軟さが必要でしょって話で、それ自体は同意するけれど。最近話題になってた意外と混合しがちな「判断」と「決断」の違いも似たような指摘。
- p.60 市川衛「がんは早期発見すべきではない」
- センセーショナルな題だけど、早期発見するべき癌は5つくらいだよというお話。最近話題の子宮頸がんがボーダーラインなんだろうけれど、なんでも早期発見のための検査をすることが是ってわけじゃなくて、早期発見したところでメリットが薄かったり、検査にリスクがあったりするので、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんが国立がん研究センターによって検査受診を推奨されていますよと。
- p.61 「醍醐花見短籍」の複製