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Drafts

@cm3 の草稿置場 / 少々Wikiっぽく使っているので中身は適宜追記修正されます。

教える機会と教え方を教えられる機会を積極的にもとう

教育立国フィンランド流教師の育て方を30分ほどで流し読みました。動機は、「教えるスキル」をどう磨けばいいか、その磨き方をどう社会システムとして組み込むかということを検討したかったからです。(参考:世の中(⊃大学)は発展途上 - Drafts

タイトルは教師の育て方となっていますが、フィンランド流の教育の紹介の部分も多いので、

では、先生たちはどのような過程を経て「先生になった」のだろうか。(p.106)

あたりから見ていきましょう。

まず、"教科担任の実習は五〇〇時間越"(p.122)という話があるように、実習の部分が厚いこと、またそれをサポートする環境が整っていることが紹介されています。"実習生ガイダンスという資格"(p.113)では、学校の1/3ほどの人たちが実習生を教えるための資格を二年がかり週末ややすみを利用して勉強して取っていて、それが就職にも有利に働くので、実習生を指導する人たちが確保されていることが挙げられています。また、"日本の場合、たとえ三~四週間の実習期間だとしても、実習生を受け入れるということは現場にとって迷惑だと考えることが多い。"(p.112)のに対し、積極的に実習生を受け入れているということも挙げられています。"選抜試験をくぐりぬけてきた実習生たち"(p.110)では実習生がまず実習を始めるにあたって厳しい選抜試験をくぐりぬける必要があることにも言及されていますが、それは学校にもよるとのことです。

次に、教師になってからの研修についてですが、現職の教員研修(p.177)で日本の10年ごとの免許更新制導入に触れ「フィンランドでは教師の力量を維持するためにどのような研修が行われているのだろうか」という形で紹介されています。国家や大学に関わる機関のものや、コンサルタント会社が行うものなど、多様な研修を、義務で3日/年、平均で8日/年、受けているとのことです。また、校長専用の研修はかなり経営色の強いものが書かれていました(直接は見せてもらえなかったそうで、伝聞口調でしたが)。

そもそもどういう人が先生になったのかと言えば、寄り道ばかりの教師たち(p.169)という章で食料品店でスカウトされたという事例などが紹介され、高齢の実習生も紹介されるなど、多様性が強調されていました。

ちょっとオフトピックですが、フィンランドの教育を視察する先生たちがフィンランドの教育をほめつつ「でも日本で同じことをやろうとしても無理」と言って片づけてしまうのは「日本人の余裕」なんじゃないかという話(p.198)や「もし、政治に無関心でいられるとしたら、それだけ日本にはまだ余裕があるんですよ、きっと。教育に関してもそうではないですか」と言われて衝撃を受けた話(p.176)など、日本の現状が問題だからとフィンランドの事例を学んでも、それを具体化するだけの熱量が不十分だという指摘があって、また熱量のまとまりについても、「社会のデザインと教育の一致」(pp.198-199)で、"フィンランドの人たちは、社会のデザインと教育のプランが見事なほどに一致していて、教師たちにもブレがない。どういう子どもを育てたいか、どんな社会をつくりたいか、そのために教育はどうあるべきか、ということが国レベルから現場レベルまで一貫している。"ということが挙げられています。

十分なモチベーションが十分な方向の一致を見ているから実現されているんだということでしょう。初等教育の場合は、生徒側に学校の選択肢があまりなく学校レベルでバラつかせることも望ましくないので、これは大事な条件です。一方、もともと僕がこの本を読んだモチベーションである大学教育に関しては、学校ごとに一貫していれば、国の中ではそれぞれ多様で良いはずです。もしくは、実習生ガイダンスのような仕組みが各教育プランごとに学校横断で用意できるならば、学校ごとに一貫している必要さえないかもしれない。そういう細かい部分は議論の余地があるけれども、実習の量と質を保つことを重視して環境を整えている、ということが一番大事な点だと思います。

また、

国家教育委員会のキルスィ・リンドルース委員長は「現場を信頼することが何より大切」と言い切り、各学校の校長は、現場教師の勤務評定をせず、教師を信頼してすべてを任せているのがフィンランドの教育である。だからこそ、現場の教師もその信頼に耐えうる人材でなくてはならないし、質の高い教員を養成しなくてはならないのである。(pp.11-12)

というのは綺麗ごとかも知れないけど、国民不信、政治不信、教育現場不信、…、不信だらけの現状への問題提起として見逃せない点です。先月のはてなブックマーク月間総合一位の学級崩壊した後の学級担任|小学校非常勤講師のブログの記事の末尾でも、教師不信を親があおることが学級崩壊を引き起こす一因となり、結果的に教育機能を下げるということが指摘されていたけれど、改革においても他人事として体制批判するところから始めるのではなくて、自分事としてできることから(cf. 小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則, Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルールのManipulation Matrix)改善を模索していくのが大事ですね。

それで、このタイトルなのですが、これはよくある『絵が上手くなる方法は?』という質問に、聞かれる側が「とにかく描け」としか言えない理由 - Togetterまとめと同じ構造で、「教育プラン」くらいは定めないと、これ以上のことが言えないということかもしれません。そういう意味で、もう少し具体化するならば、重田勝介『オープンエデュケーション』, 東京電機大学出版局, 2014. - Draftsで興味を持って書いているような、「人々が学校制度にとらわれず、臨機応変に教え学び合う」ための教材と場の提供がメインですかね。その経験を積むよう意識します。