会社の飲み会
「おい、お前、飲んでねえな!」 「私、お酒、ほんまよわいんで…」 「んなこと言ってるから飲めねえんだよ!飲んで鍛えるんだ。ほれほれ(トクトクトク)」 「…どうしてもですか?」 「そりゃあ、力づくで飲ませるわけにはいかねぇよ、でも、お前のためだ」 「…わかりました、じゃあ先輩も一緒に飲んでください。」 「あたぼーよ、そのための酒じゃねえか」 「このおつまみと一緒に。」 「???なんだこりゃ。毒キノコでも食わそうってのか?」 「いえいえ、普通にさっき注文したやつですよ(パクッ)おいしいですよ?」 「?いいぜ(パクッ)おいしいな!」 「じゃあ、カンパーイ!」 「おお!(チン、ゴクゴクゴク)」 「(ゴクゴクゴク)」 「いい飲みっぷりだ!ハハハハ」
翌朝
「おい、お前、昨日大変だったんだぞ!やっぱりあれ毒キノコだったんじゃないのか!?」 「私も食べましたよね。」 「ああ、食べたな、お前は大丈夫だったのか?」 「私はいつも通りしんどかったです。」 「…ああ、お酒弱いって言ってたもんな。」 「そうです、たぶん昨日の先輩と同じくらいしんどかったです」 そういって手渡された図鑑のコピーはラインマーカーで説明文がハイライトされていた。
ヒトヨタケ Coprinopsis atramentaria
液化する前の幼菌は食用になり美味であるが、酒類を飲む前後に食べると中毒症状を呈する。含有成分コプリンの代謝生成物1-アミノシクロプロパノールはジスルフィラム様作用を持ち、体内のアルデヒド脱水素酵素を阻害する。エタノールは代謝過程においてアセトアルデヒドを経由して酢酸へと代謝されるが、この酢酸への変換にかかわるのがアルデヒド脱水素酵素である。この結果、アセトアルデヒドが血中に蓄積するために、著しい悪酔い症状様の中毒症状を起こすこととなる。コプリンの作用が体内から消えるまで、食後一週間程度は飲酒を控えたほうが良い。
(この話はフィクションです)
友人がテングタケ食べたそうで。辛かったそうで(当然)。思いつきました。実際はヒトヨタケを美味しいままで持ち歩くのが困難だと思います。名前の通り一晩でダメになってしまうので。その意味ではホテイシメジでもよいですね。ただし、コプリンが効かない人もいれば効きすぎる人もいるようなので(一升飲むような酒豪に完全に効いてしまったら殺人になりかねない)、あくまでフィクションでお楽しみください。
参考: